はじめに
この記事では、以下の4つの項目を復習・整理することを目標にしています。
①貸倒引当金の決算整理仕訳の4パターン
②貸倒が発生した場合の期中仕訳の2パターン(「貸倒損失」、「償却債権取立益」)
③一括引当と個別引当の違い
④担保がある場合の処理
それでは、よろしくお願いします。(※使用教材の第12章「貸倒引当金」を参考に作成しています。)
貸倒引当金の決算整理仕訳
#貸倒(かしだおれ)とは
貸したお金や掛け代金を回収できないことを意味しています。貸倒になる勘定科目は、売掛金・受取手形・電子記録債権などの「営業債権」と貸付金・未収入金などの「営業外債権」に分類されます。
営業債権 | 営業外債権 |
売掛金、受取手形、電子記録債権など | 貸付金・未収入金など |
販売費及び一般管理費 | 営業外費用 |
#貸倒引当金とは
前期末日に、翌期中に貸倒が発生することを想定して、その見積もり分を先に(マイナスの)資産として計上するお金です。毎期行われる決算整理仕訳の1つになります。決算整理仕訳の方法は、差額補充法と洗替法の2つがありますが、2級の範囲は「差額補充法」のみです。
例1:期末日時点で売掛金残高が10,000円あり、そのうち3%が将来貸倒となると見積もった。なお期末日時点には『貸倒引当金』勘定の残高は200円ある場合
借方 | 貸方 |
100円 | 貸倒引当金繰入貸倒引当金 100円 |
例2:期末日時点で売掛金残高が10,000円あり、そのうち3%が将来貸倒となると見積もった。なお期末日時点には『貸倒引当金』勘定の残高は400円ある場合
借方 | 貸方 |
100円 | 貸倒引当金貸倒引当金戻入 100円 |
例3:期末日時点で、「売掛金」残高が10,000円、「電子記録債権」残高が7,000円、「貸付金」残高が3,000円あり、これらの3%が将来貸倒になると見積もった。なお「貸倒引当金」残高は400円ある場合
借方 | 貸方 |
200円 | 貸倒引当金繰入貸倒引当金 200円 |
例4:期末日時点で、「売掛金」残高が10,000円、「電子記録債権」残高が7,000円、「貸付金」残高が3,000円あり、これらの3%が将来貸倒になると見積もった。なお「貸倒引当金」残高は250円(内訳は営業債権分が210円、営業外債権が40円)である場合
借方 | 貸方 |
300円 | 貸倒引当金繰入貸倒引当金 300円 |
貸倒引当金繰入 50円 | 貸倒引当金 50円 |
上記の例は、すべて同じ割合で設定する「一括引当」での貸倒引当金の設定方法です。
貸倒引当金要設定額の算出(簿記1級や実務)
①簿記2級では、営業債権・営業外債権の2分類でしたが、簿記1級では、一般債権・貸倒懸念債権・破産再生債権等の3つに分類して、それぞれのカテゴリーで貸倒引当金要設定額を算出します。
②実務では、法人税法により設定された率を用いて貸倒引当金要設定額を算出することが多いです。
引当金における洗替法(簿記1級)
洗替法とは、期末に当期の引当金残高を全額戻入し、翌期の必要額を改めて見積もり直して、引当金を計上する方法です。
例:当期の引当金残高が100円で、翌期の引当金を500円と見積もった場合
借方 | 貸方 |
100円 | 〇〇引当金100円 | 〇〇引当金戻入
〇〇引当金繰入 500円 | 〇〇引当金 500円 |
貸倒が発生した場合の期中仕訳
期中に貸倒が発生した場合は、以下の2つのパターンに分けられます。
①当期販売分の売掛金(債権)が当期に貸倒になった場合
当期発生分の債権に対しては、前期末に費用計上(貸倒引当金に設定)していないため、「貸倒損失」勘定を使用します。
例1:当期に100円で掛け販売した商品の代金が回収不能になった場合
借方 | 貸方 |
100円 | 貸倒損失売掛金 100円 |
例2:(例1の続き)売掛金の一部の70円を当期中に回収できた場合
借方 | 貸方 |
70円 | 現金70円 | 貸倒損失
例3:(例2の続き)売掛金の一部の20円を翌期に回収できた場合
借方 | 貸方 |
20円 | 現金20円 | 償却債権取立益
②前期以前に販売分の売掛金(債権)が当期に貸倒になった場合
前期以前に発生分の債権に対しては、前期末に費用計上(貸倒引当金に設定)しているため、「貸倒引当金」勘定を使用します。
例1:前期以前に100円で掛け販売した商品の代金が回収不能になった場合
借方 | 貸方 |
100円 | 貸倒引当金売掛金 100円 |
例2:(例1の続き)売掛金の一部の30円を当期中に回収できた場合
借方 | 貸方 |
30円 | 現金30円 | 貸倒引当金
例3:(例2の続き)売掛金の一部の10円を翌期に回収できた場合
借方 | 貸方 |
10円 | 現金10円 | 償却債権取立益
貸倒が発生した時は、債権が当期に発生したものか、前期以前に発生したものか、まず判別するのがポイントです。
貸倒引当金の個別引当
特定の取引先について、個別の見積率で貸倒引当額を設定する方法です。通常、経営不振などの事情がある場合に用いられます。(見積率は問題文で指定されます。)
例:期末日時点でA社に対する「売掛金」が150,000円、B社に対する「電子記録債権」が50,000円、C社に対する「受取手形」が20,000円あり、(C社の財政状態の悪化により)C社に対する債権に50%の貸倒引当金を設定し、他の債権(A社およびB社に対する債権)は過去の貸倒実績から3%と見積もった場合(貸倒引当金残高はなし)
借方 | 貸方 |
16,000円 | 貸倒引当金繰入貸倒引当金 16,000円 |
担保がある場合
担保とは、貸倒時に弁済に充てるための保証資産(土地や建物など)のことです。
例:D社に対する貸付金1,000,000円について個別に貸倒引当金を設定する。なおD社が所有する建物が担保に提供されており、担保処分見込額は500,000円である。残額について50%の引当金を設定する場合(貸倒引当金はなし)
借方 | 貸方 |
250,000円 | 貸倒引当金繰入貸倒引当金 250,000円 |
「ふくしままさゆき」さんのYouTube解説動画は こちらからどうぞ「貸倒引当金」
※初めての方は、こちらの記事から読んでいただけますと幸いです。
