はじめに
この記事では、以下の2つの項目を復習・整理することを目標にしています。
①外貨建取引の輸入(購入)側と輸出(販売側)の仕訳
②為替予約の契約を結んだ際の振当処理
それでは、よろしくお願いします。(※使用教材の第16章「外貨建取引と為替予約」を参考に作成しています。)
外貨建取引
#外貨建取引とは
外貨建取引とは、ドル($)やユーロ(€)で行う取引のことです。
日本の会計基準では、帳簿は円で記帳するというルールが定められているので、外貨のまま仕訳をしてはいけません。
#即日払いの仕訳
1ドル100円の時にアメリカの企業から10,000ドルの商品を仕入れ、代金は取引銀行でドルに両替して当座預金から支払った場合
借方 | 貸方 |
1,000,000円 | 仕入1,000,000円 | 当座預金
#掛取引(購入=輸入)・前払金がない仕訳
決算をはさまない場合
例1:3月10日の1ドル100円のときにアメリカの企業から10,000ドルの商品を掛けで仕入れ、3月20日に買掛代金10,000ドルについて、取引銀行でドルに両替して当座預金から支払って決済した場合(決済時の為替レートは1ドル90円)
・1/10
借方 | 貸方 |
1,000,000円 | 仕入1,000,000円 | 買掛金
・1/20
借方 | 貸方 |
1,000,000円 | 買掛金900,000円 | 当座預金
100,000円 | 為替差損益
1ドル=90円になると(仕入時より円高)、10,000ドル=900,000円の支払いでよくなるため、100,000円得になります。(為替差損益で貸方計上)
決算をはさむ場合
例2:3月10日の1ドル100円のときにアメリカの企業から10,000ドルの商品を掛けで仕入れ、3月31日決算になった(決算時の為替レートは1ドル110円)。4月10日に、買掛代金10,000ドルについて、取引銀行でドルに両替して当座預金から支払って決済した場合(決済時の為替レートは1ドル108円)
・3/10
借方 | 貸方 |
1,000,000円 | 仕入1,000,000円 | 買掛金
・3/31(決算:為替レート1ドル110円)
借方 | 貸方 |
100,000円 | 為替差益100,000円 | 買掛金
・4/10(決済:為替レート1ドル108円)
借方 | 貸方 |
1,100,000円 | 買掛金1,080,000円 | 当座預金
20,000円 | 為替差損益
#掛取引(購入=輸入)・前払金がある仕訳
決算をはさまない場合
例1:1月10日の1ドル100円のときにアメリカの企業から10,000ドルの商品を掛けで輸入する契約を交わし、前払金1,000ドルを普通預金から支払った。1月20日の1ドル90円のときに商品が届き、残額は翌月末払いとした。2/28に取引銀行でドルに両替して普通預金から支払って決済した場合(2/28の為替レートは1ドル85円)
・1/10
借方 | 貸方 |
100,000円 | 前払金100,000円 | 普通預金
・1/20
借方 | 貸方 |
910,000円 | 仕入810,000円 | 買掛金
100,000円 | 前払金
・2/28
借方 | 貸方 |
810,000円 | 買掛金765,000円 | 普通預金
45,000円 | 為替差益
商品代金(ドル)から前払金(ドル)を除いた金額(9,000ドル)に、輸入時の為替レート(90円)をかけて、買掛金(円)を算出します。そして、買掛金(円)に前払金(円)を足して仕入金額(円)を求めます。後は、通常の掛取引と同じです。
決算をはさむ場合
例2:3月10日の1ドル100円のときにアメリカの企業から10,000ドルの商品を掛けで輸入する契約を交わし、前払金1,000ドルを普通預金から支払った。3月20日の1ドル90円のときに商品が届き、残額は翌月末払いとした。3/31の決算時の為替レートは88円であった。4/30に取引銀行でドルに両替して普通預金から支払って決済した場合(決済の為替レートは1ドル85円)
・3/10
借方 | 貸方 |
100,000円 | 前払金100,000円 | 普通預金
・3/20
借方 | 貸方 |
910,000円 | 仕入810,000円 | 買掛金
100,000円 | 前払金
・3/31(決算:為替レート1ドル88円)
借方 | 貸方 |
18,000円 | 買掛金18,000円 | 為替差益
前払金は、決算時の為替レートで換算し直しません。
・4/30(決済:為替レート1ドル85円)
借方 | 貸方 |
792,000円 | 買掛金765,000円 | 普通預金
27,000円 | 為替差損益
#掛取引(販売=輸出)・前受金がない仕訳
決算をはさまない場合
例1:3月10日の1ドル100円のときにアメリカの企業へ10,000ドルの商品を掛けで販売し、3月20日に売掛代金10,000ドルについて、取引銀行で円に両替して当座預金に入金を受けた場合(決済時の為替レートは1ドル90円)
・3/10
借方 | 貸方 |
1,000,000円 | 売掛金1,000,000円 | 売上
・3/20
借方 | 貸方 |
900,000円 | 当座預金1,000,000円 | 売掛金
為替差損益 100,000円 |
1ドル=90円になると(仕入時より円高)、10,000ドル=900,000円しか受け取れないので、100,000円損になります。(為替差損益で借方計上)
決算をはさむ場合
例2:3月10日の1ドル100円のときにアメリカの企業へ10,000ドルの商品を掛けで販売し、3月31日決算になった(決算時の為替レートは1ドル110円)。4月10日に売掛代金10,000ドルについて、取引銀行で円に両替して当座預金に入金を受けた場合(決済時の為替レートは1ドル108円)
・3/10
借方 | 貸方 |
1,000,000円 | 売掛金1,000,000円 | 売上
・3/31(決算:為替レート1ドル110円)
借方 | 貸方 |
100,000円 | 売掛金100,000円 | 為替差損益
・4/10(決済:為替レート1ドル108円)
借方 | 貸方 |
1,080,000円 | 当座預金1,080,000円 | 売掛金
為替差損益 20,000円 |
#掛取引(販売=輸出)・前受金がある仕訳
決算をはさまない場合
例1:1月10日の1ドル100円のときにアメリカの企業へ10,000ドルの商品を掛けで輸出する契約を交わし、前受金1,000ドルが普通預金で入金された。1月20日の1ドル90円のときに商品を輸出し、残額は翌月末払いとした。2/28に取引銀行で残額を受け取り、円に両替して普通預金へ入金した場合(2/28の為替レートは1ドル85円)
・1/10
借方 | 貸方 |
100,000円 | 普通預金100,000円 | 前受金
・1/20
借方 | 貸方 |
810,000円 | 売掛金910,000円 | 売上
前受金 100,000円 |
・2/28
借方 | 貸方 |
765,000円 | 普通預金810,000円 | 売掛金
為替差益 45,000円 |
販売代金(ドル)から前払金(ドル)を除いた金額(9,000ドル)に、輸出時の為替レート(90円)をかけて、売掛金(円)を算出します。そして、売掛金(円)に前受金(円)を足して売上(円)を求めます。後は、通常の掛取引と同じです。
決算をはさむ場合
例2:3月10日の1ドル100円のときにアメリカの企業へ10,000ドルの商品を掛けで輸出する契約を交わし、前受金1,000ドルが普通預金で入金された。3月20日の1ドル90円のときに商品を輸出し、残額は翌月末払いとした。3/31の決算時の為替レートは88円であった。4/30に取引銀行で残額を受け取り、円に両替して普通預金へ入金した場合(4/30の為替レートは1ドル85円)
・3/10
借方 | 貸方 |
100,000円 | 普通預金100,000円 | 前受金
・3/20
借方 | 貸方 |
810,000円 | 売掛金910,000円 | 売上
前受金 100,000円 |
・3/31(決算:為替レート1ドル88円)
借方 | 貸方 |
18,000円 | 為替差益18,000円 | 売掛金
前払金は、決算時の為替レートで換算し直しません。
・4/30(決済:為替レート1ドル85円)
借方 | 貸方 |
765,000円 | 普通預金792,000円 | 売掛金
為替差損益 27,000円 |
レート換算について
(1)貨幣項目(例:現金預金、売掛金、買掛金など)は決算時にCRに換算し直す。
(2)非貨幣項目(例:商品などの棚卸資産、前払金、前受金など)は決算時もHRのまま(CRに換算し直さない)。
①HR(Historical Rate):取引発生時の為替レート
②CR(Current Rate):決算時の為替レート
為替予約
#為替予約とは
将来のある時期における為替レートを現時点で決定する契約のこと。為替レートの変動による損失が生じるリスクを回避するための対策(リスクヘッジ)として行います。
為替予約の会計処理は、資金取引(貸付・借入)と営業取引(仕入・売上)で異なりますが、2級では営業取引のみが対象です。また、振当処理は日本独自の会計処理であり、理論的には好ましくありません。
#為替レートについて
(1)直物(じかもの)為替レート
現在の為替レートのこと。通常、2営業日以内に決済される取引に適用されます。
(2)先物(さきもの)為替レート
将来の特定日に適用することをあらかじめ約束した為替レートのこと。「1カ月もの」や「3カ月もの」などがあります。
#直直差額と直先差額について
(1)直直差額
為替予約を結ぶ前後の「直物為替レート」の差額のことです。「外貨建取引を行ったときの直物為替レート」
と「為替予約を結んだときの直物為替レート」の差で計算されます。
(2)直先差額
為替予約時の「直物為替レート」と「先物為替レート」の差額のことです。「為替予約時の直物為替レート」と「為替予約時の先物為替レート」の差で計算されます。
#仕訳の具体例(振当処理)
例:2月10日、直物為替レートが1ドル100円のときにアメリカの企業へ10,000ドルの商品を掛けで販売した。
2月20日、上記取引について1ドル103円(先物為替レート)で為替予約を付した。なおこの日の直物為替レートは1ドル101円であった。(いわゆる直先差額に重要性はないため当期の損益として処理する。)
3月20日、当座預金から決済した。なお決済時の直物為替レートは1ドル105円であった。
・2月10日(販売時)
借方 | 貸方 |
1,000,000円 | 売掛金1,000,000円 | 売上
・2月20日(為替予約日、損益計上)
借方 | 貸方 |
30,000円 | 売掛金30,000円 | 為替差損益
直先差額に重要性がない場合は、1ドル=103円(為替予約日の先物為替レート)と1ドル=100円の差額(販売時の直物為替レート)を損益計上すればよい。直先差額に重要性がある場合は、1ドル=101円(為替予約日の直物為替レート)と1ドル=100円(販売時の直物為替レート)の差額を損益計上し、1ドル=101円(為替予約日の直物為替レート)と1ドル=103円(為替予約日の先物為替レート)の差額は資産に計上してから決済日までの残りの期間で費用計上する。
・3月20日(決済日)
借方 | 貸方 |
当座預金 1,030,000円 | 1,030,000円 | 売掛金
①「ふくしままさゆき」さんのYouTube解説動画は こちらからどうぞ「外貨建取引」
②「ふくしままさゆき」さんのYouTube解説動画は こちらからどうぞ「為替予約」
※初めての方は、こちらの記事から読んでいただけますと幸いです。
