はじめに
この記事では、以下の2つの項目を復習・整理することを目標にしています。
①引当金の定義、会計処理の目的、会計処理の考え方について
②5つの引当金の会計処理方法
それでは、よろしくお願いします。(※使用教材の第13章「引当金概論」を参考に作成しています。)
引当金概論
#引当金とは
将来のマイナス事象(貸倒など)の発生に備えて、あらかじめ費用として計上しておく、帳簿上の見積もり金額になります。評価性引当金と負債性引当金に分けて考えると理解しやすいです。(※このように分類すると会計基準上では明文化されていませんが、実務上ではこの理解で問題ありません。)
分類 | B/S表示場所 | 目的 | 勘定科目 |
評価性引当金 | 資産の部にマイナス表示 | 資産の帳簿価額の調整(評価減) | 貸倒引当金、減価償却累計額など |
負債性引当金 | 負債の部 | 将来の支出に備える | 賞与引当金、退職給付引当金など |
#会計処理の考え方
[費用処理(〇〇引当金繰入)が本体で、「〇〇引当金」はその相手勘定科目であるとの考え方]が本質です。また、理論的には将来のマイナス事象になる原因(商品を掛けで販売など)が発生した時に、毎回費用計上するのが理想ですが、事務が煩雑になるため、現実的妥協案として、期末時点残高を基準に一括計上する決算整理仕訳を行います。
#会計処理の目的
目的は、以下の2つがあります。
① 損益計算書の正確性を保つ目的
→ 損失の発生原因がある期に費用を計上
② 貸借対照表の適正性を保つ目的
→ 売掛金などの資産価値を適正に表示(=引当金でマイナス調整)
引当金の4つの設定要件(簿記1級内容)
以下の4要件を満たす場合、企業は必ず当期に費用計上+引当金計上を行う義務があります。
①将来発生が見込まれること。
②特定の費用または損失であること。
③その発生原因が当期以前に起因していること。
④発生の可能性が高いこと(発生の蓋然性)金額が合理的に見積もれること。
修繕引当金
#修繕引当金とは
将来、大規模な修理・点検などの支出が予想されているときに、あらかじめその総費用を見積もって、毎期費用計上します。その時に設定される引当金が「修繕引当金」です。
#具体的な会計処理
建物の修繕が5年に1度実施され、5,000,000円かかると見積もられた場合
・毎期の決算整理仕訳
借方 | 貸方 |
1,000,000円 | 修繕引当金繰入修繕引当金 1,000,000円 |
・修繕が実施された期(実際には、5,200,000円かかった)
借方 | 貸方 |
4,000,000円 | 修繕引当金5,200,000円 | 当座預金
修繕費 1,200,000円 |
・修繕費の一部(500,000円分)が建物の資本価値を増加させる修繕(資本的支出)だった場合
借方 | 貸方 |
4,000,000円 | 修繕引当金5,200,000円 | 当座預金
修繕費 700,000円 | |
500,000円 | 建物
賞与引当金
#賞与引当金とは
賞与(ボーナス)の支給対象期間が決算月をまたぐ場合、当期負担分を費用計上します。その時に設定される引当金が「賞与引当金」です。(試験では、実社会と同様に年2回支給での問題が想定されます。)
#具体的な会計処理
3月31日の期末日に、翌期の夏期賞与(支給対象期間は11月1日~翌年4月30日)が6,000,000円かかると見積もられた場合
・決算整理仕訳
借方 | 貸方 |
5,000,000円 | 賞与引当金繰入賞与引当金 5,000,000円 |
・翌年6月に夏期賞与が支給された(実際は、6,500,000円)
借方 | 貸方 |
5,000,000円 | 賞与引当金6,500,000円 | 当座預金
賞与 1500,000円 |
徴収について
お金(特に税金や保険料など)を、会社などが本人に代わって集めて国に納付する仕組み。一般的に天引きと呼ばれています。
「ふくしままさゆき」さんのYoutube解説動画は役員賞与引当金
#役員賞与引当金とは
当期の功労に対して、翌期に役員賞与が支給される場合で、かつ翌期に株主の同意が必要な場合に、設定される引当金を「役員賞与引当金」と呼びます。ちなみに役員とは、代表取締役社長(社長)、専務取締役(専務)、常務取締役(常務)などのことを指します。
#「引当金」と「未払金/未払費用」の使い分け方
見積もり金額など実際に支払う金額が確定していない場合は、「引当金」勘定を使用し、支払うこともその金額も確定している場合は、「未払金/未払費用」勘定を使用します。
#具体的な会計処理
役員賞与の決定が、株主の同意が必要か不要かで、会計処理が少し異なります。(引当金を設定するかどうかの違いだけです。)
①翌期に役員賞与を6,000,000円支給する見込みで、決定は株主総会での同意が必要
・決算整理仕訳(引当金の設定)
借方 | 貸方 |
役 6,000,000円 | 員賞与引当金繰入役員賞与引当金 6,000,000円 |
・株主総会で支給の決定(引当金を未払勘定へ振替)
借方 | 貸方 |
役員 6,000,000円 | 賞与引当金6,000,000円 | 未払役員賞与
・役員賞与を支給
借方 | 貸方 |
未払役 6,000,000円 | 員賞与6,000,000円 | 現金預金
②当期末に、翌期に役員賞与を6,000,000円支給することが決定(株主総会での同意は不要)
・決算整理仕訳
借方 | 貸方 |
6,000,000円 | 現金預金未払役 6,000,000円 | 員賞与
・役員賞与を支給
借方 | 貸方 |
未払役 6,000,000円 | 員賞与6,000,000円 | 現金預金
退職給付引当金
#退職給付とは
従業員の退職時または退職後に支払われる給付のことで、①退職年金(年金形式で分割支給)と②退職一時金(退職時に一括支給)の2つに分類されます。退職年金の計算は簿記1級の範囲なので、以降は(外部に積立を行っていない場合の)退職一時金のみを扱います。
#退職給付引当金とは
退職一時金(いわゆる退職金のこと)は、将来の退職時に支給されるもので、期ごとの労働対価の積み重ねであり、給料の後払いであるので、毎期ごと費用計上すべきものになります。そこで、毎期末に当期費用負担額を見積り、費用計上することになります。その時に設定される引当金が「退職給付引当金」です。
#具体的な会計処理
将来退職給付支給の対象となる正社員1,000名分に関して、当期の退職給付の負担額10,000,000円を計上する場合
・決算整理仕訳
借方 | 貸方 |
10,000,000円 | 退職給付費用退職給付引当金 10,000,000円 |
・翌期に従業員が退職し、退職一時金3,000,000円を当座預金から支給した
借方 | 貸方 |
3,000,000円 | 退職給付引当金3,000,000円 | 当座預金
借方は「退職給付費用」になります。(×「退職給付引当金繰入」ではありません。)
商品保証引当金
#商品保証引当金とは
商品販売後の無償修理に備え、将来発生が見込まれる修理費用を見積り、費用計上します。その時に設定される引当金が「商品保証引当金」です。(自社で製造した商品の場合は、「製品保証引当金」となります。)
#具体的な会計処理
当期に10,000円の商品を10個掛けで販売した場合
・販売時
借方 | 貸方 |
100,000円 | 売掛金売上 100,000円 |
・決算整理時(無償修理が5,000円になると見積もった。引当金残高はなし。)
借方 | 貸方 |
5,000円 | 商品保証引当金繰入5,000円 | 商品保証引当金
・翌期に無償修理を依頼された。修理費用の1,000円は現金で支払った。
借方 | 貸方 |
1,000円 | 商品保証引当金1,000円 | 現金
#有料保証のサービスを付けた場合の処理
商品販売とは別の契約(売買)として考え、未経過部分を負債に計上します。(「契約負債」勘定を使用します。)
例:4月1日に10,000円の商品を10個掛けで販売した。無料保証に加え、顧客が有料保証(10個で3,000円で、保証期間3年)を別途申し込み、現金3,000円を受け取った場合
・販売時
借方 | 貸方 |
100,000円 | 売掛金売上 100,000円 |
現金 3,000円 | 契約負債 3,000円 |
・当期末(保証期間3年であるため、各期1,000円ずつ売上計上)
借方 | 貸方 |
1,000円 | 契約負債1,000円 | 売上
・翌期末
借方 | 貸方 |
1,000円 | 契約負債1,000円 | 売上
・翌々期末
借方 | 貸方 |
1,000円 | 契約負債1,000円 | 売上
「ふくしままさゆき」さんのYouTube解説動画は こちらからどうぞ「引当金概論」
※初めての方は、こちらの記事から読んでいただけますと幸いです。
