仕訳No.05 「約束手形・電子記録債権/債務」

No.5 手形・電子記録債権 2級商業簿記

※初めての方は、こちらの記事から読んでいただけますと、幸いです。

  1. はじめに
  2. 手形について
    1. #種類と概要
    2. #勘定科目
    3. #約束手形の基本的な取引の流れ
      1. ①:商品売買時の振出・受取
      2. ②:B店による手形の取立依頼
      3. ③:決済(手形期日の到来)
  3. 約束手形の裏書・割引・不渡・更改
    1. #裏書について
      1. ①:商品売買時の振出・受取
      2. ②:B店がC店へA店振出手形を譲渡し、C店の買掛金に充当
      3. ③:C店によるA店振出手形の取立依頼
      4. ④:決済(手形期日の到来)
    2. #割引について
      1. ①:商品売買時の振出・受取
      2. ②:B店がD銀行へA店振出手形を持参(販売)
      3. ③:決済(手形期日の到来)
    3. #不渡について
      1. ①:商品売買時の振出・受取
      2. ②:B店がC店へA店振出手形を譲渡し、C店の買掛金に充当
      3. ③:決済期日が到来したが、A店の口座残高が足りず、決済できない旨の連絡を、取引銀行からC店が受ける。その際、手数料1,000円を現金支払
      4. ④:C店は、法定利息分100円を含めた11,100円を、B店へ請求し、現金支払
      5. ⑤:B店は、C店に支払った11,100円を、A店へ請求
    4. #更改について
      1. ①:商品売買時の振出・受取
      2. ②:決済期日に、A店が支払期限の延長を依頼し、B店が同意。利息は手形額面に追加
  4. 電子記録債権・債務
    1. #電子記録債権・債務とは
    2. #仕訳方法
    3. #貸付・借入をする場合
  5. 売掛金の譲渡について
    1. #売掛金は譲渡できるの?
    2. #パターン①(相殺による売掛金の譲渡)
    3. #パターン②(金融機関への売却=ファクタリング)

はじめに

この記事では、以下の4つの項目を復習・整理することを目標にしています。

①手形についての基本事項

②約束手形の裏書・割引・不渡・更改について

③電子記録債権・債務の手形との比較

④売掛金の譲渡                         

それでは、よろしくお願いします。(※使用教材の第5章「手形・電子記録債権」を参考に作成しています。)

手形について

#種類と概要

手形には、約束手形為替手形の2種類があり、簿記2級では、手形は「約束手形」を指します。

約束手形 2者間で支払を約束する証券
為替手形 3者間で支払を指図する証券(簿記1級で学習)

#勘定科目

受取手形=手形額面を受け取ることができるという債権(資産)

支払手形=手形額面を支払はないといけないという債務(負債)  

受取手形(資産) 手形額面を受け取ることができる=債権
支払手形(負債) 手形額面を支払はないといけない=債務

📌 ポイント:商品売買以外で用いる場合は、営業外受取手形営業外支払手形となる

#約束手形の基本的な取引の流れ

例:A店(仕入側)がB店(販売側)から10,000円の商品を購入し、支払いを手形(90日後期日)で行う場合

①:商品売買時の振出・受取

A店(仕入側) (借)仕入 10,000円 (貸)支払手形 10,000円
B店(販売側) (借)受取手形 10,000円 (貸)売上 10,000円

②:B店による手形の取立依頼

・簿記上の仕訳は発生しない。

※実務上は、すぐに銀行に取立を依頼し、資金を期日決済で受け取る手続きをする

③:決済(手形期日の到来)

A店(仕入側) (借)支払手形 10,000円 (貸)当座預金 10,000円
B店(販売側) (借)当座預金 10,000円 (貸)受取手形 10,000円

約束手形の裏書・割引・不渡・更改

#裏書について

裏書とは、「第三者へ手形を譲渡すること」を意味しています。

これは、手形を譲渡する際に、手形の裏面に記名・押印をしてから譲渡するため、譲渡=裏書と呼ばれています。

例:

A店がB店から10,000円の商品を購入し、手形(90日後期日)で商品売買をした。

その後、B店がその受取手形を、C店との買掛金10,000円に充当するため、手形をC店に譲渡した場合

①:商品売買時の振出・受取

A店 (借)仕入 10,000円 (貸)支払手形 10,000円
B店 (借)受取手形 10,000円 (貸)売上 10,000円

②:B店がC店へA店振出手形を譲渡し、C店の買掛金に充当

B店 (借)買掛金 10,000円 (貸)受取手形 10,000円
C店 (借)受取手形 10,000円 (貸)売掛金 10,000円

③:C店によるA店振出手形の取立依頼

※仕訳は発生しない

④:決済(手形期日の到来)

A店 (借)支払手形 10,000円 (貸)当座預金 10,000円
C店 (借)当座預金 10,000円 (貸)受取手形 10,000円

#割引について

割引とは、「金融機関へ手形を販売すること」を意味しています。

これは、手形を販売する際に、期日よりも早く換金化することにより、手形額面よりも割引かれて換金されるので、割引と呼ばれています。裏書の時と同様に、手形の裏面に記名・押印が必要です。

例:

A店がB店から10,000円の商品を購入し、手形(90日後期日)で商品売買をした。

その後、B店がその受取手形をD銀行へ持って行き、現金化してもらう場合

①:商品売買時の振出・受取

A店 (借)仕入 10,000円 (貸)支払手形 10,000円
B店 (借)受取手形 10,000円 (貸)売上 10,000円

②:B店がD銀行へA店振出手形を持参(販売)

B店 (借)現金 9,000円
(借)手形売却損 1,000円
(貸)受取手形 10,000円

※割引かれる分は、「手形売却損」として計上

③:決済(手形期日の到来)

A店 (借)支払手形 10,000円 (貸)当座預金 10,000円

#不渡について

不渡とは、「決済期日に、手形を振出した側の当座預金口座の残高がない場合に、決済されないこと」を意味しています。

その際、手形の裏書をした者が、債務者となり、代わりに支払いをしなければなりません。このような経緯で、代わりに支払

いをすることを「偶発債務」と呼びます。また、不渡を6ヶ月の間に2回発生させると、銀行取引を停止されるので、債務者も優先的

に手形の支払いを行うので、売掛金回収の可能性は高くなります。

例:

A店がB店から10,000円の商品を購入し、手形(90日後期日)で商品売買をした。

その後、B店がその受取手形を、C店との買掛金10,000円に充当するため、手形をC店に譲渡した。

その後、手形の決済期日が到来したが、A店の口座残高が足りず、手形は不渡となり、C店は取引銀行からその旨の連絡を受けた。

(決済手数料1,000円は、その際現金で支払った。)

その後、C店は、法定利息分100円を含めた11,100円を、B店へ請求し、現金で支払いを受けた場合

①:商品売買時の振出・受取

A店 (借)仕入 10,000円 (貸)支払手形 10,000円
B店 (借)受取手形 10,000円 (貸)売上 10,000円

②:B店がC店へA店振出手形を譲渡し、C店の買掛金に充当

B店 (借)買掛金 10,000円 (貸)受取手形 10,000円
C店 (借)受取手形 10,000円 (貸)売掛金 10,000円

③:決済期日が到来したが、A店の口座残高が足りず、決済できない旨の連絡を、取引銀行からC店が受ける。その際、手数料1,000円を現金支払

C店 (借)不渡手形 11,000円 (貸)受取手形 10,000円
(貸)現金 1,000円

④:C店は、法定利息分100円を含めた11,100円を、B店へ請求し、現金支払

B店 (借)不渡手形 11,100円 (貸)現金 11,100円
C店 (借)現金 11,100円 (貸)不渡手形 11,000円
(貸)受取利息 100円

⑤:B店は、C店に支払った11,100円を、A店へ請求

現実的に、A店は経営状態が悪く、回収の見込みは低いため、貸倒損失や貸倒引当金で処理することになる。

例えば、現金で1,100円を回収でき、貸倒引当金がない場合は、以下のように仕訳する。

B店 (借)現金 1,100円
(借)貸倒損失 10,000円
(貸)不渡手形 11,100円

📌 ポイント:割引の場合も、手形が不渡になった場合の処理は同じです。

#更改について

更改とは、「支払期限を延長するために、古い手形を新しい手形に交換すること」を意味しています。

その際は、延長分の利息を支払います。利息の支払いは、新しい手形額面に追加するか、現金で支払う場合もあります。

例:

A店がB店から10,000円の商品を購入し、手形(90日後期日)で商品売買をした。

90日後、A店は支払期限の延長を依頼し、B店が同意し、延長分の利息(1,000円)を新しい手形額面に追加した場合

①:商品売買時の振出・受取

A店 (借)仕入 10,000円 (貸)支払手形 10,000円
B店 (借)受取手形 10,000円 (貸)売上 10,000円

②:決済期日に、A店が支払期限の延長を依頼し、B店が同意。利息は手形額面に追加

A店 (借)支払手形 10,000円
(借)支払利息 1,000円
(貸)支払手形 11,000円
B店 (借)受取手形 11,000円 (貸)受取手形 10,000円
(貸)受取利息 1,000円

電子記録債権・債務

#電子記録債権・債務とは

従来、手形など紙でやり取りしていた支払の約束を、「でんさいネット」という専用のネットワーク(電子債権記録機関)に登録することで、インターネット上で記録・管理できるようにしたものです。実務上、手形取引が煩雑であるため、導入が進められています。以下の表が、約束手形との比較になります。

電子記録債権 約束手形
媒体 電子(ネット上)
印紙税 不要 必要(高額)
安全性 高い(改ざん不可) 低い(紛失・盗難リスクあり)
譲渡など 簡単(ボタン操作) 煩雑(紙の裏書など)

#仕訳方法

仕訳の方法は、勘定科目が異なるだけで、約束手形の時と考え方は同じです。

・(営業外)受取手形→(営業外)電子記録債権

・(営業外)支払手形→(営業外)電子記録債務

・手形売却損→電子記録債権売却損

に変更するだけです。不渡の制度は存在しませんが、債務不履行になった場合は、手形の時と同様に、貸倒損失などで処理されます。更改は、一度登録した古い債権の情報が抹消され、新しい債権の情報で登録されることを意味します。

#貸付・借入をする場合

電子記録債権・債務で、貸付・借入を行った場合、現金の時と同様に、勘定科目は「貸付金」「借入金」が使用されます。

電子記録貸付金・借入金という勘定科目は、現在のところありませんので、注意が必要です。

表示科目は、全て「貸付金」・「借入金」となります。以下の表にまとめています。

勘定科目(借方) 勘定科目(貸方) 表示科目
現金 貸付金 借入金 貸付金/借入金
手形 手形貸付金 手形借入金 貸付金/借入金
電子記録 貸付金 借入金 貸付金/借入金

売掛金の譲渡について

#売掛金は譲渡できるの?

売掛金は「将来お金を受け取る権利」なので、その権利を第三者に譲ること(売ること)ができます。これを「売掛金の譲渡」といいます。

#パターン①(相殺による売掛金の譲渡)

例:

A店は、B店に対して10,000円の売掛金、C店に対して10,000円の買掛金を所持している。

双方の同意が得られたので、B店に対する売掛金を、C店へ譲渡した場合

A店 (借)買掛金 10,000円 (貸)売掛金 10,000円

#パターン②(金融機関への売却=ファクタリング)

例:

A店は、B店に対する売掛金10,000円を、金融機関(ファクタリング会社)に9,000円で売却。

期日よりも早期に現金化するため、1,000円割引。代金は当座預金に振り込まれた場合

A店 (借)当座預金 9,000円
(借)債権売却損 1,000円
(貸)売掛金 10,000円
※「ふくしままさゆき」さんのYouTube解説動画は こちらからどうぞ(手形取引)。
※「ふくしままさゆき」さんのYouTube解説動画は こちらからどうぞ(電子記録債権・債務)。

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