仕訳No.09 「サービス業の会計」

No.9サービス業の会計処理 2級商業簿記

費用収益対応の原則

#費用収益対応の原則とは

収益に対応する費用だけを計上するという会計の大原則で、「収益が実現したから、それに対応する費用を計上する」ということ。この原則により、会計期間ごとの正確な損益を算出することが可能となります。

具体例①:商品売買(小売業・卸売業)

・商品を販売して売上を計上したとき、その売上に対応する売上原価を同時期に費用として計上。(売上原価対立法)

・期末に棚卸を行って在庫確認し、当期の仕入原価を求める。(三分法)

具体例②:減価償却

・固定資産が提供する「便益(利益を生む能力)」に対して、期間ごとに費用計上する。

・便益が間接的であっても、長期的な対応関係があるとみなして費用計上される。

具体例③:サービス業

・モノの販売に限らず、サービス業でも費用収益対応の原則が適用される。

・実際の売上(収益)に応じて、それを得るために使った人件費や経費(費用)などを計上する

補足:例外

・一部の費用(広告費や研究開発費など)は明確な収益と対応しない場合がある。

・その場合は、「発生主義」により、その期に発生した費用として処理される。

サービス業の会計処理

#サービス業とは

商品を売るのではなく、「役務(サービス)」を提供する業種のこと。つまり、モノではなく宿泊・運搬・安心などの無形の便益を提供して対価を得る業種のことであり、具体的には、旅行業・タクシー業・美容業・宿泊業・学習塾・警備業などがある。

#基本の勘定科目

検定試験では、役務収益・役務原価・前受金・仕掛品の4つが多いかなと思います(下表参照)。簿記2級では、新しく「仕掛品」という勘定科目が登場します。これは、未完了の仕事や未完成製品の製造にかかった費用を、いったん資産として計上するための勘定科目です。費用として計上ができない理由は、費用収益対応の原則があるためです。仕掛品は、ここでは前払費用のような扱いになります。

また、商品売買同様にツケ払いが可能なので、前受金勘定だけではなく、売掛金や買掛金(未払金)の勘定科目を使用することも当然あります。サービス業=前受金とならないように注意が必要です。

勘定科目 内容
役務収益 サービス提供が完了したときに計上する収益
役務原価 サービス提供にかかった費用
前受金 サービス提供前に受け取った代金
仕掛品 サービス提供前に支払った費用(まだ費用化されない)

#売上計上のタイミング

費用収益対応の原則に基づき、サービスの提供が完了したとき(履行義務の充足)に「役務収益」として計上します。

#仕訳の具体例

①即時提供型の場合(理髪店やタクシー、日帰りバスツアーの現金後払いなど)

例:サービス完了と同時に、現金1,000円を回収する。

(借)現金1,000円 (貸)役務収益1,000円

②サービス提供までに時間を要する場合(旅行会社のツアー業務で現金前払いなど)

例:

・ツアー会社が8月31日決行のバスツアーを企画し、8月1日にバス運行会社に、バス運行料として30,000円を小切手で支払う

(借)仕掛品30,000円 (貸)当座預金30,000円

・8月20日に、ツアー参加者から100,000円の入金があった

(借)当座預金100,000円 (貸)前受金100,000円

・8月31日に、ツアーを催行した

(借)前受金100,000円 (貸)役務収益100,000円
(借)役務原価30,000円 (貸)仕掛品30,000円
※「ふくしままさゆき」さんのYouTube解説動画は こちらからどうぞ(サービス業の会計)。

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