仕訳No.06 「有形固定資産」

No.6 有形固定資産 2級商業簿記

※初めての方は、こちらの記事から読んでいただけますと、幸いです。

この記事では、以下の3つの項目を復習・整理することを目標にしています。

①有形固定資産の減価償却法(定額法・定率法・生産高比例法・200%定率法)

②有形固定資産の除却・売却・廃棄

③建物仮勘定/資本的支出・収益的支出/火災滅失時の会計処理                       

それでは、よろしくお願いします。(※使用教材の第6章「有形固定資産」を参考に作成しています。)

有形固定資産の減価償却法

#有形固定資産とは

有形固定資産とは、「長期にわたり使用する資産で、姿・形があるもの」を指し、「土地、建物、備品、自動車(車両運搬具)」などが該当します。また、減価償却の対象(「土地」は対象外)になります。他の固定資産(無形固定資産/投資その他の資産)との比較は、以下の表を参照してください。

固定資産の分類
説明 具体例 備考
有形固定
資産
形があり、長期的に
使用する資産
土地、建物、車両、
機械、備品
「減価償却」の対象
(土地は除く)
無形固定
資産
形はないが、長期的に利用する資産 ソフトウェア、特許権、
商標権、のれん
「償却」
の対象
投資その他の資産 上記2つに分類されない資産 満期保有目的債権、子会社株式、長期貸付金 評価損処理
あり

#減価償却とは

減価償却とは、「資産の価値を使用年数・使用量に応じて分割し、毎年費用処理する」ことを指します。方法は、帳簿上の処理方法と

計算方法で分かれています。また、減価償却の仕訳は、決算時に行われます。

帳簿上の処理方法

「直接法」「間接法」の2種類があります。(下表参照)

内容
直接法 「減価償却費」を「固定資産」から差し引いて、取得金額を直接減少させる
間接法 「減価償却費」を「減価償却累計額」で管理し、「固定資産」は取得金額のまま表示

※固定資産の取得金額と償却状況を分けて管理できるため、「間接法」が主流です。(以降、間接法でのみ処理)

計算方法

「定額法」「定率法」「生産高比例法」の3種類が、簿記2級で出題される会計ルール上の計算方法です。(下表参照)

説明 特徴
定額法 毎年一定額を費用に計上する方法 各年の償却費が同額で、計画的に償却される
定率法 毎年一定率を帳簿価額にかけて償却する方法 初年度が多く、年々償却費が減っていく
生産高比例法 使用量や生産量に比例して償却する方法 機械など使用度合に応じた償却ができる

#定額法

毎期、一定額ずつ減価償却費を計上する方法。減価償却費は取得価額から残存価額を差し引いた金額を、耐用年数で均等に配分する。

計算式 (取得価額 − 残存価額) ÷ 耐用年数

例1:取得金額:500,000円、残存価額:50,000円、耐用年数:5年の場合

毎期の減価償却費は、(500,000-50,000)÷5=90,000円となる。

例2:例1と同様の有形固定資産を、12月10日取得した場合の決算整理仕訳(3月31日決算)

期中取得したら、減価償却費は月割(取得月含む)になるので、12・1・2・3月の4ヶ月分を減価償却費に計上する。

よって、取得年の減価償却費は、90,000×4/12(1/3)=30,000円となる。

#定率法

毎期、帳簿価額(未償却残高)に一定割合(償却率)をかけて減価償却費を計算する方法。年度が進むにつれて減価償却費が少なくなる。

計算式 (取得価額 − 期首減価償却累計額)×償却率
⁼期首時点の未償却残高×償却率

例1:取得金額:500,000円、残存価額:50,000円、耐用年数:5年、償却率:0.36904の場合

・1年目の減価償却費は、(500,000−0)×0.36904=184,520円となる。(未償却残高は、315,480円)

・2年目の減価償却費は、(500,000−184,520)×0.36904=116,425円となる。(未償却残高は、199,055円)

・3年目の減価償却費は、(500,000−300,945)×0.36904=73,459円となる。(未償却残高は、125,596円)

・4年目の減価償却費は、(500,000−374,404)×0.36904=46,350円となる。(未償却残高は、79,246円)

・5年目の減価償却費は、(500,000−420,754)×0.36904=29,245円となり、調整後、29,246円となる。(残存価額:50,000円のため)

例2:例1と同様の有形固定資産を、12月10日取得した場合の決算整理仕訳(3月31日決算)

期中取得したら、減価償却費は月割(取得月含む)になるので、12・1・2・3月の4ヶ月分を減価償却費に計上する。

よって、取得年の減価償却費は、(500,000−0)×0.36904×4/12(1/3)=61,507円となる。

#生産高比例法

毎期、実際の使用量や生産量に応じて減価償却費を計算する方法。生産量や走行距離などに比例して費用配分する。

計算式 (取得価額 − 残存価額)×実際使用量/見積総使用量

例:取得金額:500,000円、残存価額:50,000円、耐用年数:5年、走行可能な見積総距離:9万kmの自動車を購入した場合

・1年目(3万km走行)の減価償却費は、(500,000−50,000)×3/9(1/3)=150,000円となる。

・2年目(1万km走行)の減価償却費は、(500,000−50,000)×1/9=50,000円となる。

※期中取得の場合でも、使用しなければ、減価償却費の計上は発生しない。

#200%定率法

毎期、①「未償却残高に200%定率法償却率(1÷耐用年数×2)を乗じた減価償却費」②「取得価額に保証率を乗じた償却保証額」を比較し、「前者①」が大きい場合は、(200%定率法)減価償却費」を計上、「後者②」が大きい場合は、「未償却残高に改定償却率を乗じた(改定償却率)減価償却費」を計上する方法。この計算方法は、法人税法上のルールで定められたものであり、会計理論は存在せず、こういう方法で節税して良いですよと法律で定めた方法なので、理屈を丸暗記する(しかない)。

例:取得金額:500,000円、残存価額:0円、耐用年数:5年、保証率:0.108、改定償却率:0.500とした場合

償却保証額は、500,000×0.108⁼54,000となる。

・1年目の減価償却費は、(500,000−0)×(1÷5×2)=500,000×0.4⁼200,000円(>54,000円)となる。

・2年目の減価償却費は、(500,000−200,000)×(1÷5×2)=300,000×0.4⁼120,000円(>54,000円)となる。

・3年目の減価償却費は、(500,000−320,000)×(1÷5×2)=180,000×0.4⁼72,000円(>54,000円)となる。

・4年目の減価償却費は、(500,000−392,000)×(1÷5×2)=108,000×0.4⁼43,200円(<54,000円)であるため、未償却残高×改定償却率⁼108,000×0.500⁼54,000円となる。

・5年目の減価償却費は、4年目と同様に、54,000円となる。これで、残存価額0円となる。

有形固定資産の除却・売却・廃棄

#検定試験での除却・売却・廃棄とは 

検定試験では、除却・売却・廃棄は、以下の表の意味で通常使用されている。「除却」は、税務上では「資産を使用しなくなった⁼事業用途から外した」という意味で、会計上では「固定資産台帳から除く処理をした」という意味で使用されており、混同しやすいので注意が必要です。売却・廃棄を行えば、会計上の「除却」は必ず行われます。

検定試験での意味
除却 スクラップとして売却することを予定して(会計上の)除却すること
売却 (税務上の)除却せずそのまま売却すること
廃棄 (税務上の)除却せずそのまま廃棄すること

#「除却」の仕訳について 

例:

所有している自動車(取得価額1,000,000円、減価償却累計額800,000円)を除却した。スクラップとしては100,000円の処分可能価額がある場合(貯蔵品は、実際に売却したら、未収入金(現金)などに振り替える。)

(借)車両運搬具減価償却累計額800,000円
(借)貯蔵品100,000円
(借)固定資産除却損100,000円
(貸)車両運搬具1,000,000円

#「売却」の仕訳について 

例:

所有している自動車(取得価額1,000,000円、減価償却累計額800,000円)を150,000円で売却した。150,000円は現金で受け取った場合

(借)車両運搬具減価償却累計額800,000円
(借)現金150,000円
(借)固定資産売却損50,000円
(貸)車両運搬具1,000,000円

#「廃棄」の仕訳について 

例:

所有している自動車(取得価額1,000,000円、減価償却累計額800,000円)を廃棄した。廃棄費用の50,000円は現金で支払った場合

(借)車両運搬具減価償却累計額800,000円
(借)固定資産廃棄損250,000円
(貸)車両運搬具1,000,000円
(借)現金50,000円

#応用編(期中での仕訳について) 

例:

25年6月10日に所有している機械(24年4月20日購入、取得価額1,000,000円、残存価額100,000円、耐用年数5年、定率法、償却率0.36904、間接法)を800,000円で売却し、現金で受け取った場合

・25年3月31日までの減価償却費:(1,000,000ー0)×0.36904=369,040円

・25年6月10日までの減価償却費:(1,000,000ー369,040)×0.36904×3/12=58,212円

(借)機械装置減価償却累計額369,040円
(借)減価償却費58,212円
(借)現金800,000円
(貸)機械装置1,000,000円
(借)固定資産売却益227,252円

その他の論点

#①建設仮勘定について

有形固定資産を建設中のときに使用する一時的な資産勘定。工事が完了するまでは固定資産にできないため、「仮に積み立てておく」ための勘定科目。

例:

・建物(5,000,000円)の建設にあたり、建設業者に手付金(1,000,000円)の小切手を振り出した

(借)建物仮勘定1,000,000円 (貸)当座預金1,000,000円

・2回目の支払いで、建設業者に手付金(1,000,000円)の小切手を振り出した

(借)建物仮勘定1,000,000円 (貸)当座預金1,000,000円

・建物が完成し、建設業者に残金(3,000,000円)の小切手を振り出し、建物の引き渡しを受けた

(借)建物5,000,000円 (貸)当座預金3,000,000円
(貸)建物仮勘定2,000,000円

#②「資本的支出」と「収益的支出」について

資産の価値を増加させたり、寿命を延ばす支出(建物の増築・耐震強度増加)を「資本的支出」、資産の維持・修繕など通常の運用維持のための支出(建物の水漏れ修理や外壁塗装)を「収益的支出」という。

例1:

建物の改良と修繕を行い、支払いは小切手(1,000,000円)を振り出した。この内、300,000円は改良と認められた場合。

(借)建物300,000円
(借)修繕費700,000円
(貸)当座預金1,000,000円

例2:

建物を増設中(工事代金5,000,000円はかねてから支払済)。工事が終了し、引き渡しを受け、代金のうち2,000,000円が修繕費として使用されていた場合

(借)建物3,000,000円
(借)修繕費2,000,000円
(貸)建設仮勘定5,000,000円

#③固定資産が火災で滅失した場合の会計処理

例1:

建物(取得金額:1,000,000円、減価償却累計額:700,000円)が火災により焼失した場合

(借)建物減価償却累計額700,000円
(借)火災損失300,000円
(貸)建物1,000,000円

例2:

・建物(取得金額:1,000,000円、減価償却累計額:700,000円)が火災により焼失した。限度額1,000,000円の火災保険がかけられている。

(借)建物減価償却累計額700,000円
(借)未決算300,000円
(貸)建物1,000,000円

・後日、保険会社より、保険金1,000,000円を支払う旨の連絡が入った。

(借)未収入金1,000,000円 (貸)未決算300,000円
(貸) 保険差益700,000円

例3:

・建物(取得金額:1,000,000円、減価償却累計額:700,000円)が火災により焼失した。限度額1,000,000円の火災保険がかけられている。

(借)建物減価償却累計額700,000円
(借)未決算300,000円
(貸)建物1,000,000円

・後日、保険会社より、保険金200,000円を支払う旨の連絡が入った。

(借)未収入金200,000円
(借)火災損失100,000円
(貸)未決算300,000円
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